麦門冬湯は市販で買える？効果や副作用、飲み方、処方薬との違いを医師が解説

麦門冬湯とは

「風邪は治ったのに咳だけが続く」

「痰はほとんど出ないのに咳き込みが止まらない」

「夜間に咳き込んで眠れない」

こうした「乾いた咳」や「刺激性の咳」に対して、古くから用いられてきた代表的な漢方薬が麦門冬湯（ばくもんどうとう）です。

乾いた咳は、気道粘膜が荒れ、少しの刺激でも反射的に咳が出やすい「過敏な状態」になっていることが背景にあります。表面的には咳が続いているように見えても、原因は「咳を止める力」よりも「乾燥と過敏性」にあります。

麦門冬湯は、乾燥して荒れてしまった気道を内側から潤し、粘膜の保護、軽い炎症の改善、痰の切れやすさの改善など、複数の角度から咳にアプローチする処方です。

風邪後の咳、夜間の乾いた咳、痰が少なくヒリつく咳などに幅広く用いられます（出典※1）。

この記事では、麦門冬湯の効果、生薬構成、向いているタイプ、飲み方、副作用、そしてオンライン診療での入手方法まで、医師の視点から丁寧に解説します。

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※1 出典：医薬品インタビューフォーム「ツムラ麦門冬湯エキス顆粒（医療用）」

https://medical.tsumura.co.jp/products/029/pdf/029-if.pdf

麦門冬湯の効果

麦門冬湯は、乾燥して敏感になった気道を「潤す」ことを中心に、咳の原因に働きかけます。

咳を単純に「止める」というよりも、咳が続く背景にある「乾き」「炎症」「痰の絡み」に対して総合的にアプローチする漢方薬です。

具体的には、麦門冬湯を適切に使うことで、以下のような改善を期待できます（参考※2）。

• 乾いた咳が続く状態
• 少量で粘り気のある痰の排出の後押し
• 咳の刺激による喉のヒリつき・痛み
• 風邪の治りかけに残る咳
• 会話中や乾燥した環境での咳

また、患者さんが実際に負担を感じるのは「咳そのもの」以上に、それによる生活上の不便です。
会話のたびに咳が込み上げる、寝入りばなに胸の奥がカサついてむせる、水を飲んでも刺激で咳が出てしまうなど、「生活の質を下げる咳」にも麦門冬湯は適しています。

※2 出典：添付文書「ツムラ麦門冬湯エキス顆粒（医療用）」

https://medical.tsumura.co.jp/products/029/pdf/029-tenbun.pdf

麦門冬湯の構成生薬

麦門冬湯は、以下の6つの生薬で構成されています（出典※3）。

• 麦門冬
• 半夏
• 人参
• 大棗
• 粳米
• 甘草

麦門冬は、乾燥した咳に対する中心的な生薬です。喉や気道の乾いた刺激を和らげ、炎症で敏感になった粘膜に潤いを補う役割があります（参考※4）。

半夏は痰の絡みを軽減し、気道の「つっかかる感じ」を緩和します。

人参・大棗・粳米は体力を補いながら粘膜を保護し、甘草は炎症を和らげ、処方全体の調和を整えます。

複数の生薬が異なる角度から作用することで、乾燥・咳・粘膜保護のすべてを同時にケアする設計となっています。

※3 出典：クラシエ漢方セラピー「麦門冬湯」

https://www.kracie.co.jp/ph/k-therapy/prescription/bakumondoto.html

※4 参考：漢方ナビ「麦門冬」

https://www.kamponavi.com/herb/827

麦門冬湯が向いている人

乾燥と咳が結びつきやすい体質の方に、麦門冬湯は特に相性の良い処方です（参考※5）。

• 乾燥した空気で咳が出やすい
• 風邪後に咳だけが長引く
• 夜に咳き込む
• 痰が絡むが量は少なく切れにくい

こうしたタイプは、気道粘膜が乾燥で敏感になっていることが多く、麦門冬湯の「潤す」作用が活きます。

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※5 参考：クラシエ漢方セラピー「麦門冬湯」

https://www.kracie.co.jp/ph/k-therapy/prescription/bakumondoto.html

麦門冬湯が向かない咳のタイプ

麦門冬湯の「潤す」作用は乾いた咳に有効ですが、以下のような症状を伴う咳には、治療方針が異なるため、向いていないことがあります。

• 黄色い痰が多い咳
• 熱感が強い咳
• 喘鳴（ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音）がある咳
• 痰が大量に出る、あるいは水っぽい痰が出る咳

これらの咳は、体内で強い炎症や感染が起こっている、あるいは気管支が収縮している（咳喘息など）可能性があり、麦門冬湯だけでは対応が難しいケースが多いです。

咳はすべて同じではなく、「どんな咳か」を見極めることが治療選択で非常に大切です。

例えば、咳喘息や上気道炎後咳嗽の初期に麦門冬湯が補助的に使われることもありますが、気管支拡張薬や吸入治療が主体となる場面もあるため、自己判断ではなく医師の診察が大切になります。

用法・用量

「ツムラ麦門冬湯エキス顆粒（医療用）」の場合、成人では通常、1日9.0g（3包）を2〜3回に分けて、食前または食間に服用します（出典※6）。

漢方薬は空腹時の方が吸収が良いとされており、処方本来の働きが発揮されやすくなります。

乾燥が強い場合には、白湯でゆっくり服用することで喉の潤いを補い、症状の改善を後押しすることがあります。

飲み忘れた場合は、気づいた時点で1回分を服用し、次の服用時間が近い場合には1回分を飛ばします。

※6 出典：添付文書「ツムラ麦門冬湯エキス顆粒（医療用）」

https://medical.tsumura.co.jp/products/029/pdf/029-tenbun.pdf

副作用と注意点

麦門冬湯は比較的安全に使用できる処方ですが、副作用として胃部不快感、食欲不振、下痢などが現れる場合があります（出典※7）。

また、甘草を含むため、むくみ、しびれ、筋力低下、高血圧などを伴う偽アルドステロン症には注意が必要です（出典※7）。甘草は他の多くの漢方薬にも含まれているため、注意が必要です。また利尿薬との併用時のほか、高齢者でも特に慎重に判断する必要があります。服用を開始する際には、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

妊娠中や授乳中の使用については、添付文書上、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされています（出典※7）。自己判断での服用は避け、必ず医師と相談しましょう。

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※7 出典：添付文書「ツムラ麦門冬湯エキス顆粒（医療用）」

https://medical.tsumura.co.jp/products/029/pdf/029-tenbun.pdf

麦門冬湯を入手するには？｜オンライン診療・患者目線のクリニックでも処方可能

麦門冬湯は医療用漢方薬として処方でき、また市販薬として入手可能な製剤もあります。

ただし、市販薬と医療用では成分量が異なることもあり、乾いた咳に対する効果を安定して得るためには医療機関での処方が望ましいケースがあります。

乾いた咳が続く背景には、咳喘息、上気道炎後咳嗽、アレルギー性咳嗽、後鼻漏など、さまざまな疾患が隠れていることがあります。

市販薬では改善しない、夜間の咳がつらい、長引いて困っているという場合には、早めに医師に相談することをおすすめします。

『患者目線のクリニック』のオンライン漢方外来では、麦門冬湯を含む漢方薬の処方が可能です。

年間診療件数10万件以上の実績があり、年中無休で早朝6時から深夜24時まで診察を受け付けています。仕事の前後や夜間、休日など、自分の隙間時間に相談しやすい体制が整えられています。
全国どこからでも受診可能で、予約、診察、決済、薬の受け取りまでをオンラインで完結でき、薬の自宅配送または当日にいつもの薬局で受取にも対応しています。

乾いた咳に悩んでいるものの、病院へ行く時間がとれない方でも、オンライン診療を入り口に相談し、必要に応じて対面診療や他科受診につなげてもらうことができます。忙しい方や小さなお子さんがいる方にとって、オンライン診療と漢方処方の組み合わせは、負担を減らしながら症状に向き合う有効な選択肢の一つといえます。

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麦門冬湯の市販薬｜代表的な製品と特徴

麦門冬湯を市販で試したい場合、ドラッグストアで手に入りやすい顆粒・錠剤・トローチなど複数の形状があります。

ツムラ「ツムラ漢方麦門冬湯エキス顆粒（ばくもんどうとう）」

第2類医薬品・顆粒タイプ。成人は1回1包を1日2回、食前または食間に服用します。15歳未満には年齢ごとに細かい用量設定があり、子どもでも使いやすい設計が特徴です。乾いた咳・のどの乾燥感・痰が少なく切れにくい咳に向きます。

出典：ツムラ「ツムラ漢方麦門冬湯エキス顆粒」

https://www.tsumura.co.jp/brand/products/kampo/029.html

クラシエ「麦門冬湯エキス錠クラシエ［144錠］」

第2類医薬品・錠剤タイプ。成人では通常1回6錠を1日3回、食前または食間に服用します。顆粒が苦手な方や持ち運びたい方に続けやすい形状で、のどが乾いて痛む咳などに使われます。

出典：クラシエ漢方セラピー「麦門冬湯エキス錠クラシエ」

https://www.kracie.co.jp/products/ph/10167400_2220.html

小太郎漢方製薬「漢方せき止めトローチS『麦門冬湯』」

第2類医薬品・トローチタイプ。成人では1回2個を1日3回、ゆっくり口の中で溶かして服用します。のどの乾燥や刺激感が強いときに「直接のどへ効かせる」目的で選ばれやすい製品で、会話が多い職業や外出先で咳を抑えたい人に便利です。

出典：小太郎漢方製薬「漢方せき止めトローチS『麦門冬湯』」

https://www.kotaro.co.jp/product/product_list/detail/%E6%BC%A2%E6%96%B9%E3%81%9B%E3%81%8D%E6%AD%A2%E3%82%81%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81s%E3%80%8C%E9%BA%A6%E9%96%80%E5%86%AC%E6%B9%AF%EF%BC%88%E3%81%B0%E3%81%8F%E3%82%82%E3%82%93%E3%81%A9%E3%81%86/

市販の麦門冬湯はいずれも、乾いた咳やのどの乾燥に対して手軽に使える一方で、生薬量や構成は医療用と異なることがあります。咳が長引いている場合、発熱や息苦しさを伴う場合、持病のある方は、市販薬だけで判断せず一度医療機関に相談することをおすすめします。

よくある質問（Q&A）

Q：効果はどれくらいで実感できますか？

乾いた咳が中心の場合、数日で変化を感じる方もいらっしゃいます。長引く咳では、1〜2週間で改善がみられるケースが多い印象です。

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Q：授乳中・妊娠中でも使用できますか？

妊娠中は有益性と安全性を踏まえた慎重な判断が必要です（出典※8）。授乳中も同様です。自己判断での服用は避け、必ず産婦人科医・主治医と相談しましょう。

※8 出典：添付文書「ツムラ麦門冬湯エキス顆粒（医療用）」https://medical.tsumura.co.jp/products/029/pdf/029-tenbun.pdf

Q：他の漢方薬や西洋薬と併用しても大丈夫ですか？

他の漢方薬と併用する場合には、構成生薬の重複に注意が必要です。特に甘草を含む処方を併用すると、偽アルドステロン症や低カリウム血症などの副作用リスクが高まります。すでに服用中の薬やサプリメントがある場合は、必ず医師か薬剤師に相談しましょう。

まとめ

麦門冬湯は、乾いた咳、痰がほとんど出ない刺激性の咳、喉のヒリつきや乾燥感といった「乾きが背景にある咳」に用いられる漢方薬です。
風邪が治っても粘膜の敏感さだけが残り、夜間の咳き込みや会話中の咳、空調で悪化する咳が続く場合に役立ちます。気道を内側から潤し、咳の悪循環を断つことを目指すため、乾燥しやすい体質や季節の変わり目に咳が出やすい方とも相性の良い薬です。

副作用として胃部不快感や下痢、甘草による偽アルドステロン症があり、むくみ・倦怠感・血圧上昇がみられる際は注意が必要です。高齢者や心疾患・腎疾患のある方、他の甘草含有薬を使用している場合は、医師のフォローのもとで慎重に使用します。妊娠中・授乳中の方も、まずは医師に相談してください。

オンライン診療が広がり、忙しくて受診が難しい方や咳で外出が負担になる方でも、自宅から漢方治療を相談しやすくなりました。『患者目線のクリニック』のように年中無休・早朝から深夜まで診療できるオンライン漢方外来を活用すれば、麦門冬湯を含む治療に無理なくアクセスできます。

乾いた咳は「体質だから仕方ない」と我慢されがちですが、その背後には整えられる要因が潜んでいることがあります。睡眠の質が落ちている、仕事に支障が出ている、生活の不便が続いている、そんなときは一人で抱え込まず、早めに医師へ相談してください。
『患者目線のクリニック』のオンライン診療は、料金も対面診察と大きく変わりません（別途システム利用料1,000円が必要です）。本日予約の空き枠も確認可能ですので、お忙しい方はぜひ気軽に相談してみてはいかがでしょうか。

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