大建中湯は市販で買える？効果や副作用、飲み方、処方薬との違いを医師が解説

大建中湯（だいけんちゅうとう）とは

「お腹が冷えて張りやすい」

「食後にガスがたまって苦しい」

「手術のあと、腸が動かずお腹が重い感じが続く」

こうした腸の動きが落ちている感覚が前面に出ているときに、選択肢として挙がる漢方薬が大建中湯です。

大建中湯は、腹部の冷えを背景とした腸管機能低下に対して古くから用いられてきた代表的な処方で、「中を大いに建てる」という名の通り、弱った消化管を内側から立て直すことを目的に設計されています。

現代医療においては、術後腸管麻痺や慢性便秘、腹部膨満感など、腸の運動低下を伴う病態に対して幅広く使用されており、特に消化管外科領域では術後管理の一環として用いられる機会が多い漢方薬です（出典※1）。

この記事では、大建中湯の効果、体質との相性、構成生薬、注意点、飲み方、オンライン診療での処方について、医師の視点で整理します。

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※1 出典：医薬品インタビューフォーム「ツムラ大建中湯エキス顆粒（医療用）」
https://medical.tsumura.co.jp/products/100/pdf/100-if.pdf

大建中湯の効果

大建中湯が検討されるのは、腸の動きが落ち、「お腹がうまく回っていない」感覚が続いている状態です。腹部が冷えやすく、食後に張りやすい、ガスがたまりやすい、便が出にくいといった症状が前面に出るケースと相性が良い漢方薬です。

薬剤添付文書上では、腹部の冷感を伴う腹痛、腹部膨満感、便秘などを目標として用いられることが示されています（出典※2）。

実際の臨床では、開腹手術や腹腔鏡手術後に腸管運動が低下した状態、いわゆる術後腸管麻痺の予防や改善目的で、消化管外科領域を中心に使用される場面が多いです。

近年では、単に「お腹を温める漢方」という理解を超え、腸管運動の促進や腸管血流の改善、炎症環境への作用といった多面的な効果が注目されるようになり、術後管理や慢性腹部症状における役割が再評価されています（参考※3、※4）。

※2 出典：添付文書・薬剤情報「ツムラ大建中湯エキス顆粒（医療用）」

https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00005268.pdf

※3 参考：理化学研究所「炎症性腸疾患における漢方『大建中湯』の作用機構を解明」

https://www.riken.jp/press/2022/20220602_1/index.html

※4 参考：医薬品インタビューフォーム「ツムラ大建中湯エキス顆粒（医療用）」

https://medical.tsumura.co.jp/products/100/pdf/100-if.pdf

大建中湯の構成生薬

大建中湯は、乾姜、人参、山椒という比較的少数の生薬で構成された処方です。
生薬数は多くありませんが、それぞれの役割が明確で、「腸管機能を立て直す」という目的に特化した組み立てになっています（出典※5、※6）。

中心となるのは、体の内側から冷えを改善する乾姜と、消化吸収や全身状態を支える人参です。
乾姜は腹部を温めることで腸管の血流や動きを底支えします。
人参は術後や慢性症状で消耗した状態に対して、回復の土台を整える方向に働きます。
そこに山椒が加わることで、腸管を直接刺激し、動きの鈍くなった腸を「動かす」作用が重ねられています。

この三者の組み合わせにより、大建中湯は単に温めるだけの処方ではなく、冷えを改善しながら腸管運動を促し、弱った消化管を内側から支えるという立体的な設計になっています。飲んですぐに強い変化を起こすタイプの漢方ではありませんが、腸の動きが落ちた状態を徐々に立て直していく処方として、術後管理や慢性腹部症状の場面で選択されてきました。

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※5 出典：名城大学 特設サイト「第6回 日本の伝統医学」

https://www.meijo-u.ac.jp/sp/harbal_medicine/2014/006.html

※6 出典：巣鴨千石皮ふ科「漢方薬100 大建中湯（ダイケンチュウトウ）」

https://sugamo-sengoku-hifu.jp/medicines/daikenchuto.html

大建中湯が向いている人

大建中湯が向いているのは、腹部が冷えやすく、腸の動きが落ちているタイプです。
食後にお腹が張りやすい、ガスがたまりやすい、便が出にくいといった症状を自覚しやすく、冷えをきっかけに腹痛や不快感を繰り返すケースと相性が良い漢方薬です。

体力が極端に低下した虚弱体質に限らず、手術後や長期臥床後など、一時的に腸管機能が低下している状況でも使用されます。とくに、全身状態は比較的保たれているものの、「お腹だけが動かない」「腸が止まっている感じが続く」といった訴えが前面に出る場合に選択されることが多い漢方薬です。

一方で、腹部に明らかな熱感があり、炎症症状が強く出ている場合には、体質や病態を見極めたうえで慎重に判断する必要があります。冷えを基盤としない腹部症状では、他の処方や西洋医学的評価が優先されることもあります。

飲み方・服用のタイミング

ツムラ大建中湯エキス顆粒（医療用）は、通常、成人で1日15gを2〜3回に分けて、食前または食間に服用します（出典※7）。

漢方薬は空腹時の方が吸収が安定しやすく、大建中湯も同様に、食前あるいは食間での服用が基本とされています。食前は食事の30分〜1時間前、食間は食後2〜3時間後を指します。

症状や年齢、体格によって用量は適宜調整され、術後管理などでは腸管の状態に応じて、服用タイミングや回数が医師の判断で調整されることがあります。腹部症状が強い場合や胃腸が過敏な方では、ぬるま湯に溶かしてゆっくり飲むことで、負担が軽減されることもあります。

大建中湯は、飲んですぐに劇的な変化を起こす処方ではなく、腸管機能の回復過程を下支えする目的で使われる漢方薬です。そのため、「即効性がない」と感じて中断するよりも、症状の推移を見ながら一定期間継続することで、腹部の張りや動きに変化が出てくることが多い処方です。用量や中止の判断は、自己判断ではなく、医師と相談しながら行うことが望まれます。

※7 出典：添付文書・薬剤情報「ツムラ大建中湯エキス顆粒（医療用）」

https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00005268.pdf

副作用・注意点

大建中湯は比較的安全性の高い漢方薬とされていますが、体質や使用状況によっては注意が必要な点があります。

構成生薬に人参や山椒を含むため、まれに胃部不快感、腹部膨満感、下痢などの消化器症状がみられることがあります（出典※8）。

また、人参を含む漢方薬では、長期大量投与時に偽アルドステロン症やミオパチーなどの報告があり、特に高齢者や基礎疾患を有する場合には、経過を見ながらの使用が重要です。むくみ、血圧上昇、脱力感などがみられた場合には、漫然と継続せず、早めに再評価を行います。

大建中湯は「腹部の冷えを背景とした腸管機能低下」を想定して用いられる処方であるため、腹部に明らかな熱感が強い場合や、急性腹症が疑われる状況では、適応を慎重に判断する必要があります。症状が漢方の想定する体質と合致していない場合には、かえって腹部症状が増悪することもあります。

他の漢方薬や西洋薬を併用している場合、また基礎疾患を有する場合には、自己判断での中止や増量は避け、医師の管理下で使用することが望まれます。

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※8 出典：添付文書・薬剤情報「ツムラ大建中湯エキス顆粒（医療用）」

https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00005268.pdf

作用機序に関する近年の知見

大建中湯の作用機構については、近年、分子レベルでの研究が進んでいます。

理化学研究所 生命医科学研究センター 粘膜システム研究チームの研究では、大建中湯が炎症性腸疾患モデルにおいて腸管炎症の制御に関与する可能性が示されています。この研究では、その背景として、炎症環境下における腸管神経系と免疫系の相互作用に大建中湯が影響を及ぼしている可能性が示唆されています（出典※9）。

これらの知見は、大建中湯が症状を一時的に抑えるだけでなく、腸管機能の調整に関与する処方として位置づけられる可能性を示すものと考えられます。

※9 出典：理化学研究所「炎症性腸疾患における漢方『大建中湯』の作用機構を解明」

https://www.riken.jp/press/2022/20220602_1/index.html

大建中湯を入手するには？｜オンライン診療・患者目線のクリニックでも処方可能

大建中湯は、医療機関で医療用漢方薬として処方されているほか、一般のドラッグストアでも市販薬として購入することは可能です。

ただし、市販薬と医療用では生薬量や配合バランスが異なる場合があり、術後管理や腹部症状が続いているケースでは、医療機関での処方のほうが症状に合わせた調整がしやすいことがあります。

腹部の張りやガス、便秘、腹痛といった症状は、単なる冷えや一時的な不調だけでなく、術後の腸管機能低下、薬剤の影響、炎症性疾患、機能性消化管障害などが背景にあることも少なくありません。

症状が長引いている場合や、日常生活に支障が出ている場合には、市販薬で様子を見るよりも、早めに医師へ相談することが安心につながります。

『患者目線のクリニック』では、腹部膨満感や便秘、冷えに伴う腹部症状といった大建中湯が検討される症状だけでなく、下痢と便秘を繰り返す状態、胃腸の不調、冷え、だるさ、不眠など、漢方外来で対応している幅広い慢性的な不調について相談が可能です。

年間診療件数10万件以上の実績があり、年中無休で早朝6時から深夜24時まで診察を受け付けています。仕事の前後や夜間、休日など、自分の生活リズムに合わせて受診しやすい体制が整えられています。

全国どこからでも受診可能で、予約から診察、決済、薬の受け取りまでをオンラインで完結でき、薬は自宅配送または当日にいつもの薬局で受け取ることも可能です。

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大建中湯の市販薬｜代表的な製品と特徴

大建中湯を市販で試したい場合、ドラッグストアで購入できる製品をご紹介します。腹部の冷えや張り、ガスがたまりやすい感じ、便秘気味といった症状に対して、まずはセルフケアとして検討されることの多い市販漢方薬です。

ツムラ「ツムラ漢方大建中湯エキス顆粒」

顆粒タイプの第2類医薬品で、成人は通常1回1包2.5gを1日3回、食前または食間に服用します。15歳未満については年齢ごとに用量が設定されており、体格や年齢に応じて調整できる設計です。

お腹が冷えて痛む、腹部が張る、便通がすっきりしないといった「腸の動きが落ちている感覚」を伴う症状を目標に用いられます。生薬構成は医療用の大建中湯に基づいており、市販薬としては比較的スタンダードな位置づけの製品です。

出典：ツムラ「ツムラ漢方大建中湯エキス顆粒」

https://www.tsumura.co.jp/brand/products/kampo/100.html

市販の大建中湯は、日常的な腹部の冷えや張りといった症状に対して取り入れやすい一方、医療用と比べると生薬量や適応の幅には違いがあります。腹部症状が長引く場合や、術後の腸管機能低下、強い腹痛を伴う場合には、市販薬のみで判断せず、医療機関での相談を検討することが大切です。

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よくある質問（Q&A）

Q：どのくらいで効果を感じますか？

個人差はありますが、数日〜1週間ほどで腹部の張りや重さが少しずつ和らいでくると感じる方が多い印象です。術後や慢性的な腸管機能低下を背景とする場合には、腸の動きが安定するまでに数週間程度かかることもあり、症状の推移を見ながら継続して使用されることがあります。

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Q：他の薬や漢方と併用できますか？

大建中湯は他の薬と併用されることもありますが、漢方薬同士の併用や、消化管に作用する薬剤との組み合わせでは注意が必要な場合があります。
また、体質や症状によっては併用により腹部症状が変化することもあるため、併用を考える際は医師または薬剤師に相談してください。

Q：妊娠中や授乳中でも使えますか？

妊娠中・授乳中は、母体や胎児・乳児への影響を考慮し、有益性がリスクを上回ると判断される場合に限って慎重に使用されます（出典※10）。

自己判断での開始や中止、市販薬との併用は避け、必ず医師に相談することが重要です。

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※10 出典：添付文書・薬剤情報「ツムラ大建中湯エキス顆粒（医療用）」

https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00005268.pdf

まとめ

大建中湯は、腹部の冷えや腸管運動の低下を背景とする症状に対して用いられてきた漢方処方です。腹部の張りやガス、便通の乱れ、冷えに伴う腹痛など、「腸がうまく動いていない感覚」が前面に出る状態と相性があります。

特に、開腹手術や腹腔鏡手術後など、一時的に腸管機能が落ちている場面や、慢性的な腹部不快感が続いているケースで選択されることの多い漢方薬です。

効果は即効性というよりも、腸管機能の回復過程を下支えしながら、少しずつ腹部の状態を整えていくイメージで現れることが多く、症状の推移を見ながら継続して用いられます。

近年では、腸管運動や血流への作用に加え、炎症環境や神経系との関わりも研究されており、「お腹を温める漢方薬」という枠にとどまらない位置づけが整理されつつあります。

もし、

• 腹部の張りや不快感が長く続いている
• 便秘やガスが改善しない
• 冷えをきっかけに腹痛を繰り返す
• 術後からお腹の調子が戻らない

こうした状態が続いている場合は、市販薬だけで様子を見るのではなく、一度医療機関を受診しましょう。似た症状でも、腸閉塞、炎症性疾患、薬剤の影響など、別の要因が関与していることもあります。

オンライン診療を活用すれば、外来受診が難しい状況でも、自宅や職場から相談し、処方や薬の受け取りまでを無理なく進めることが可能です。体調が優れない時や忙しい時でも、治療を先延ばしにせず取り組める選択肢の一つといえます。

「お腹の不調を抱えたまま、なんとか日常をやり過ごしている」

そんな時、大建中湯は一つの選択肢として検討される漢方薬です。

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