加味逍遙散の処方について｜効果・副作用・飲み方を医師が解説

加味逍遙散とは

「イライラする、不眠が続く、体がほてる…でも冷える」
そんな、心と体のバランスの乱れを整える代表的な漢方薬が「加味逍遙散（かみしょうようさん）」です。

加味逍遙散は、気の巡りを良くし、血流を整え、体内の熱を冷ますことで、心身の不調を穏やかに改善します。
とくに更年期障害や月経不順、PMS（月経前症候群）など、ホルモンバランスや自律神経の乱れによって起こるゆらぎに適しています（出典※1）。

もともとの「逍遙散（しょうようさん）」に、清熱作用を持つ「牡丹皮」と「山梔子（さんしし）」を加えたことから“加味”と呼ばれます。

この記事では、加味逍遙散の効果・構成生薬・副作用・服用方法から、オンライン診療での処方までを、医師の視点で詳しく解説します。

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※1 出典：クラシエ漢方セラピー「加味逍遙散」
https://www.kracie.co.jp/ph/k-therapy/prescription/kamishoyosan.html

加味逍遙散の効果・効能

東洋医学では、心身の不調を「気・血・水（き・けつ・すい）」の乱れとして捉えます。
加味逍遙散は、このうち「気（ストレス）」と「血（ホルモン・循環）」、そして「熱（のぼせ）」を同時に整える処方です。

「体質虚弱な婦人で肩がこり、疲れやすく、精神不安などの精神神経症状」（引用※2）

※2 引用：添付文書・薬剤情報「ツムラ加味逍遙散エキス顆粒（医療用）」
https://medical.tsumura.co.jp/products/024/pdf/024-tenbun.pdf

こうした状態は、ストレスや更年期などによる“肝気鬱結（かんきうっけつ）”に対応する典型例です。

臨床的には、更年期障害、月経不順、月経困難症、不眠症、冷え、肩こり、精神不安、自律神経失調症など、非常に幅広い症状に用いられます（出典※3）。

また最近では、プレ更年期や産後の情緒不安、睡眠リズムの乱れなどにも応用されるケースが増えています。

※3 出典：ツムラ医薬品インタビューフォーム「ツムラ加味逍遙散エキス顆粒（医療用）」
https://medical.tsumura.co.jp/products/024/pdf/024-if.pdf

加味逍遙散の構成生薬と作用

加味逍遙散は、以下の10種類の生薬で構成されています（出典※4、参考※5）。

• 柴胡（サイコ）・薄荷（ハッカ）：気の巡りを整え、精神的緊張やストレスによる気滞（きたい）をやわらげる。
• 当帰（トウキ）・芍薬（シャクヤク）・牡丹皮（ボタンピ）・山梔子（サンシシ）：血の巡りを整え、のぼせ・ほてり・イライラ・月経不順を鎮める。当帰と芍薬は「血虚（けっきょ）」を補い、牡丹皮と山梔子は清熱により余分な熱を取り除く。
• 白朮（ビャクジュツ）・茯苓（ブクリョウ）・甘草（カンゾウ）・生姜（ショウキョウ）：胃腸機能を整え、体全体のバランスを支える。白朮と茯苓は脾（ひ）を補い、水分代謝を助け、甘草・生姜が調和作用で全体をまとめる。

このように、気血両面にアプローチすることで、心の安定と体の回復を同時に促します。
女性ホルモンの変動にともなう不調に対し幅広く作用するのが特徴です。

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※4 出典：ツムラ医薬品インタビューフォーム「ツムラ加味逍遙散エキス顆粒（医療用）」
https://medical.tsumura.co.jp/products/024/pdf/024-if.pdf
※5 参考：クラシエ漢方セラピー「加味逍遙散」
https://www.kracie.co.jp/ph/k-therapy/prescription/kamishoyosan.html

加味逍遙散が向いている人・使い分けのポイント

次のような症状が複数当てはまる方に、加味逍遙散が適しています。

• イライラ・焦燥感・落ち込みがある
• 顔がのぼせるのに、手足は冷える
• 月経前になると眠れない・情緒が不安定になる
• ため息や肩こり、動悸、食欲不振を起こしやすい
• ストレスで胃腸が弱りやすい

一方で、「血の滞り（瘀血）」が強いタイプには桂枝茯苓丸（けいしぶくりょうがん）、
「血虚＋水滞」が目立つタイプには当帰芍薬散（とうきしゃくやくさん）が用いられます。

加味逍遙散はその中間に位置し、「気・血・熱」をバランスよく整える“中庸の処方”といえます（参考※6）。

※6 参考：漢方ナビ「加味逍遙散」
https://www.kamponavi.com/med/982

用法・用量と飲み方

加味逍遙散エキス顆粒（医療用）は、成人では1日7.5g（1回2.5gを1日3回）、食前または食間に服用します（出典※7）。
空腹時に服用することで吸収が良くなり、効果が安定しやすくなります。

服用後は白湯で体を温めるようにすると、血流が促されてより効果的です。
体質や症状に応じて、医師が1〜3か月を目安に継続処方するケースが一般的です。

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※7 出典：添付文書・薬剤情報「ツムラ加味逍遙散エキス顆粒（医療用）」
https://medical.tsumura.co.jp/products/024/pdf/024-tenbun.pdf

副作用と注意点

加味逍遙散は穏やかな薬効が特徴ですが、体質や併用薬によって注意が必要です。
報告されている主な副作用には、発疹、かゆみ、食欲不振、下痢、倦怠感、肝機能異常などがあります（出典※8）。

また、甘草（かんぞう）を含むため、長期服用や他の甘草含有製剤との併用で偽アルドステロン症が起こることがあります。甘草は他の漢方にもよく含まれるため、飲み合わせによる過剰摂取にも気をつけましょう。
症状としては、むくみ、筋力低下、血圧上昇、低カリウム血症などが現れることがあります。

冷えが極端に強い方では、清熱作用のある牡丹皮・山梔子により悪化する場合もあります。
服用中に体調変化を感じた場合は、すぐに医師へ相談しましょう。

妊娠中や妊娠の可能性がある女性には、原則として投与しないことが望ましいとされています。本剤に含まれる牡丹皮（ボタンピ）には子宮収縮を促す作用があり、流早産の危険性が指摘されています。
授乳中の安全性も確立していません（出典※8）。
治療上の有益性と母乳栄養の有益性を比較し、授乳の継続または中止を医師が検討する必要があります（出典※8）。
したがって、妊娠・授乳中は自己判断での服用を避け、必ず医師に相談してください。

※8 出典：添付文書・薬剤情報「ツムラ加味逍遙散エキス顆粒（医療用）」
https://medical.tsumura.co.jp/products/024/pdf/024-tenbun.pdf

加味逍遙散の薬価

病院やクリニックで処方される医療用の加味逍遙散は、保険適用時に3割負担で5〜7日分で数百円程度です。
（薬価や実費はメーカー・年度により異なります）

加味逍遙散を入手するには？｜オンライン診療でも処方可能

加味逍遙散は、医療機関で処方される医療用医薬品のほか、ドラッグストアなどでOTC医薬品としても販売されています。
ただし、似たような症状を示す他の疾患（甲状腺機能異常、うつ病、更年期うつなど）との区別が重要です。
自己判断での長期服用は避け、まず医師に相談することをおすすめします。

近年ではオンライン診療でも処方が可能で、通院が難しい方でも自宅から診察を受けられます。
たとえば「患者目線のクリニック」では、加味逍遙散をオンラインで処方しており、予約・診察・決済・配送までが自宅で完結します。
女性特有の不調を丁寧にヒアリングし、ライフステージに合わせた処方が可能です。

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よくある質問（Q&A）

Q：どんな人に向いていますか？

ストレスでイライラしやすく、不眠やのぼせ、冷えを同時に感じる方に適しています（出典※9）。

Q：どのくらいで効果が出ますか？

個人差はありますが、経験則上は1か月ほどで睡眠や気分の変化を感じる方が多いです。

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Q：他の薬と併用できますか？

甘草を含む薬（葛根湯・麻黄湯など）や降圧薬との併用では注意が必要です。必ず医師・薬剤師に確認してください。

Q：妊娠中でも服用できますか？

妊娠中や妊娠の可能性がある女性には、原則として投与しないことが望ましいとされています。本剤に含まれる牡丹皮（ボタンピ）には子宮収縮を促す作用があり、流早産の危険性が指摘されているためです。授乳中の安全性も確立していません（出典※10）。
妊娠・授乳中は自己判断での服用を避け、必ず医師に相談してください。

※9 出典：漢方ナビ「加味逍遙散」
https://www.kamponavi.com/med/982

※10 出典：添付文書・薬剤情報「ツムラ加味逍遙散エキス顆粒（医療用）」
https://medical.tsumura.co.jp/products/024/pdf/024-tenbun.pdf

まとめ

加味逍遙散は、ストレスやホルモンバランスの乱れによる「イライラ」「不眠」「のぼせ」「冷え」を整える代表的な漢方薬です。
10種類の生薬が心身両面に作用し、自律神経のバランスを回復させていきます。

更年期障害やPMS（月経前症候群）など、薬だけでは改善しにくい“ゆらぎ”の症状に対して、体の内側から回復力を引き出す点が特徴です。
単なる「症状を抑える薬」ではなく、「体質を整える薬」として継続的に使われるケースも多く見られます。

また、保険適用で経済的な負担が少なく、オンライン診療でも処方が可能なため、忙しい女性でも利用しやすい環境が整っています。

「イライラして眠れない」「気分の波に疲れる」
そんな方にとって、日々を穏やかに過ごすための強い味方となるでしょう。

ただし、甘草や清熱生薬を含むため、他の薬との併用や長期服用には注意が必要です。
また、妊娠中または妊娠の可能性がある場合は使用を避けることが望ましく、授乳中も安全性が確立していないため、必ず医師に相談しましょう。
心と体、どちらにも優しく寄り添う。
加味逍遙散は、女性のライフステージを支えるバランスの漢方です。

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