二朮湯は市販で買える？効果や副作用、飲み方、処方薬との違いを医師が解説

二朮湯（にじゅつとう）とは

「肩や首のこりが慢性的に続いている」

「五十肩と診断されたが、痛みや動かしにくさがなかなか改善しない」

「腕を動かすと痛みが出て、日常生活に支障が出ている」

こうした首・肩・腕まわりの痛みやこわばりが長引いているときに、選択肢に挙がる漢方薬が二朮湯です。

二朮湯は、蒼朮（ソウジュツ）と白朮（ビャクジュツ）という2種類の朮を主薬とし、体内の水分代謝を整えながら、筋肉や関節まわりの痛みに働きかけるよう設計されています。古くから、肩こり、五十肩、頚肩腕症候群、上腕神経痛など、上半身の痛みや重だるさを伴う状態に用いられてきました（参考※1）。

特に、急性の炎症や強い腫れが落ち着いたあとも、「痛みだけが残っている」「動かしにくさが続いている」といった回復が停滞している段階で検討されることが多く、湿布や鎮痛薬だけでは十分な改善が得られない場合に処方されることがあります。水分代謝の乱れが背景にあると考えられる症例では、症状の改善を期待して処方されることがあります（参考※2）。

この記事では、二朮湯の効果の考え方、体質との相性、構成生薬、副作用や注意点、飲み方、医療機関での処方について、医師の視点で整理します。

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※1 参考：添付文書「ツムラ二朮湯エキス顆粒（医療用）」

https://medical.tsumura.co.jp/products/088/pdf/088-tenbun.pdf

※2 参考：新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック

「五十肩、頚肩腕症候群、上腕神経痛、肩や首のこり・痛み、腕の痛みに思わぬ効果を発揮する二朮湯」

https://shinmaebashi-sukoyaka.com/blog/99.html

二朮湯の効果

二朮湯が向くのは、首や肩、腕まわりの痛みを主訴とする状態です。長時間のパソコン作業やスマートフォン操作による肩こり、頚肩腕症候群、四十肩・五十肩などで、痛みや動かしにくさを伴う場合に処方が検討されます。

臨床現場では、炎症所見が目立たない一方で、可動域の制限や重だるさが残り、日常動作で違和感を訴えるといった経過を示すことが多く、局所治療のみでは対応しきれないと判断されることがあります。

このような場合、漢方的には体内に停滞した水分や循環の乱れが関与していると考えられます。二朮湯は鎮痛を主目的とする処方ではなく、水分代謝を整え、血流や代謝の改善を通じて症状の緩和を図る漢方薬であり、全身の巡りの悪さが肩や腕の症状として表れているケースで適応しやすいとされています（参考※3）。

ただし、似たような肩や腕の痛みでも、神経障害や整形外科的疾患が背景にあることもあるため、必要に応じて画像検査や診察を行った上で処方を判断します。

※3 参考：新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック
「五十肩、頚肩腕症候群、上腕神経痛、肩や首のこり・痛み、腕の痛みに思わぬ効果を発揮する二朮湯」

https://shinmaebashi-sukoyaka.com/blog/99.html

二朮湯の構成生薬

二朮湯は、蒼朮（ソウジュツ）と白朮（ビャクジュツ）という二種類の朮を中心に構成された漢方薬です。これらの生薬はいずれも水分代謝に関与し、体内に停滞した水をさばく方向性で処方全体が設計されています（出典※4）。

そこに、半夏や陳皮、茯苓といった胃腸機能や水の巡りを整える生薬、甘草や生姜など全体のバランスを調整する生薬が組み合わされており、局所の痛みだけでなく全身状態を踏まえた処方構成となっています。また、羌活や威霊仙、天南星など、上半身の痛みやこわばりに着目した生薬が含まれている点も特徴です。

このような構成から、二朮湯は即効的な鎮痛を期待する処方ではなく、肩や腕の症状に背景として関与している水分停滞や循環の偏りに対して、徐々に状態を整えていく漢方薬と位置づけられます。

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※4 出典：添付文書「ツムラ二朮湯エキス顆粒（医療用）」

https://medical.tsumura.co.jp/products/088/pdf/088-tenbun.pdf

二朮湯が向いている人

二朮湯が向くのは、肩や首、腕まわりの症状を繰り返しやすく、全身状態の影響が背景にあると考えられる体質です（参考※6）。慢性的な肩こりや頚肩腕症候群、五十肩などで、消炎鎮痛剤や物理療法を続けても十分な改善が得られにくい場合に検討されることがあります。

とくに、炎症所見が目立たない一方で、重だるさや可動域の制限が前面に出ているケースや、天候や体調によって症状が変動しやすい場合には、二朮湯の処方意図と合致しやすいとされています。

また、胃腸が弱く、体全体の締まりが少ない体質で、筋肉や結合組織の緩みと水分の停滞が同時にみられる場合にも適応しやすいと考えられています。こうした体質では、上半身の症状が局所の問題というよりも、全身の巡りの悪さとして現れていることが多く、漢方的なアプローチが選択される場面があります（参考※6）。

※6 参考：新前橋すこやか内科・漢方内科クリニック

「五十肩、頚肩腕症候群、上腕神経痛、肩や首のこり・痛み、腕の痛みに思わぬ効果を発揮する二朮湯」

https://shinmaebashi-sukoyaka.com/blog/99.html

飲み方・服用のタイミング

医療用のツムラ二朮湯エキス顆粒では、通常、成人で1日7.5gを1日2〜3回に分けて、食前または食間に服用します（出典※7）。

漢方薬は一般に空腹時の方が吸収が安定しやすく、二朮湯も同様に、食前や食間での服用が基本となります。食前は食事の30分〜1時間前、食間は食後2〜3時間後を指します。

二朮湯は、痛みを即座に抑えることを目的とした処方ではなく、水分代謝や全身の巡りを整えることで症状の改善を目指す漢方薬です。そのため、「飲んですぐ楽になる」というよりも、数日から数週間かけて、肩や腕の重だるさや動かしにくさが徐々に変化していくことが多いとされています。

胃腸が弱い方では、ぬるま湯に溶かして服用すると負担が軽くなる場合があります。また、冷えやむくみが強い日は、温かい飲み物で服用するなど、生活状況に合わせて調整することで、服薬を続けやすくなることがあります。

服用量や期間については、自己判断で変更せず、症状や体質の変化をみながら医師と相談のうえで継続することが重要です。

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※7 出典：添付文書

「ツムラ二朮湯エキス顆粒（医療用）」

https://medical.tsumura.co.jp/products/088/pdf/088-tenbun.pdf

副作用と注意点

二朮湯は比較的使いやすい漢方処方ですが、甘草を含むため、偽性アルドステロン症には注意が必要です。むくみ、血圧上昇、倦怠感、手足の脱力感、低カリウム血症などがみられることがあります（出典※8）。

また、まれではありますが、肝機能障害や間質性肺炎といった重篤な副作用が報告されています。発疹、発熱、咳、息切れ、全身倦怠感などの症状が現れた場合には、速やかに服用を中止し、医療機関を受診することが大切です（出典※8）。

胃腸が弱い方では、体質によっては胃部不快感や軟便などの消化器症状が出ることがあります。二朮湯は水分代謝や全身の巡りを整える目的で用いられる処方であるため、体質に合わない場合には、かえって体調の違和感として現れることもあります。

高血圧、心疾患、腎機能障害がある方や、他の甘草を含む漢方薬を併用している場合には、血圧や電解質異常に注意しながら、医師の管理下で使用することが望まれます。自己判断で服用せず、医師または薬剤師に相談しましょう。

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※8 出典：添付文書「ツムラ二朮湯エキス顆粒（医療用）」

https://medical.tsumura.co.jp/products/088/pdf/088-tenbun.pdf

二朮湯を入手するには？｜オンライン診療・患者目線のクリニックでも処方可能

二朮湯は、医療機関で医療用漢方薬として処方できるほか、市販薬を購入することも可能です。

ただし、市販薬と医療用では成分量が異なることもあり効果を安定して得るためには医療機関での処方が望ましいケースがあります。

首や肩、腕の痛みは、単なる筋肉疲労だけでなく、神経障害や整形外科的疾患、内科的な背景が関与していることもあります。症状が続く場合や、動かしにくさや重だるさが日常生活に影響している場合には、市販薬で様子を見るよりも、一度医師に相談することをおすすめします。

『患者目線のクリニック』では、二朮湯が検討されるような慢性的な肩こりや首・腕の痛みだけでなく、冷え、むくみ、疲労感、不眠、めまいなど、漢方外来で対応可能な幅広い不調について相談が可能です。

年間診療件数10万件以上の実績があり、年中無休で早朝6時から深夜24時まで診療を行っています。仕事の前後や夜間、休日など、自分の生活リズムに合わせて受診しやすい体制が整えられています。

全国どこからでもオンラインで受診でき、予約から診察、決済、薬の受け取りまでを自宅で完結できます。薬は自宅配送のほか、当日にいつもの薬局で受け取ることも可能です。

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二朮湯の市販薬｜代表的な製品と特徴

二朮湯を市販で試したい場合、漢方薬局などで購入できる製品があります。肩や首、腕まわりの痛みや重だるさが気になるものの、まずはセルフケアとして様子を見たい場合に検討されることの多い選択肢です。医療用とは剤形や服用方法が異なるため、特徴を理解したうえで選ぶことが大切です。

赤尾漢方薬局「二朮湯 ニジュツトウ お手軽煎じ薬」

こちらは、生薬を煎じて服用するタイプの二朮湯です。あらかじめ刻まれた生薬がセットになっており、自宅で煎じることで服用できます。エキス製剤とは異なり、漢方薬本来の形に近い方法で取り入れたい方に向いています。

肩こりや五十肩、頚肩腕症候群などで、痛みやこわばりが続いているものの、内服薬としては穏やかな方法から試したい場合に選ばれることがあります。煎じ薬特有の香りや味はありますが、その分、生薬そのものの感覚を重視したい方には続けやすい選択肢です。

一方で、煎じる手間や時間が必要になるため、忙しい方や顆粒・錠剤に慣れている方には負担に感じる場合もあります。服用量や体調に不安がある場合は、漢方に詳しい薬剤師や医師に相談しながら取り入れることをおすすめします。

出典：赤尾漢方薬局「二朮湯 ニジュツトウ お手軽煎じ薬」

https://www.yakuzenyu-yu.co.jp/item/nijutsuto_kpc/

市販の二朮湯は、慢性的な肩や腕の不調に対して比較的取り入れやすい一方、医療用とは生薬量や処方設計が異なります。症状が長引いている場合や、痛みや動かしにくさが日常生活に支障をきたしている場合には、市販薬だけで判断せず、医療機関での相談も検討すると安心です。

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よくある質問（Q&A）

Q：どのくらいで効果を感じますか？

効果の現れ方には個人差がありますが、二朮湯は即効性を期待する処方ではありません。数日から数週間かけて、肩や腕の重だるさ、動かしにくさが徐々に変化していくと感じる方が多い印象です。慢性的な症状の場合は、一定期間継続して服用することがあります。

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Q：他の薬や漢方と併用できますか？

二朮湯には甘草が含まれるため、他の甘草含有薬や漢方薬との併用には注意が必要です。市販の漢方薬や総合感冒薬にも甘草が含まれていることがあるため、併用を考える場合は、事前に医師や薬剤師へ相談してください。

Q：妊娠中・授乳中でも使用できますか？

妊娠中や授乳中は、母体や胎児・乳児への影響を考慮し、有益性がリスクを上回ると判断される場合にのみ慎重に使用されます（出典※9）。自己判断での服用開始や市販薬との併用は避け、必ず医師に相談してください。

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※9 出典：添付文書「ツムラ二朮湯エキス顆粒（医療用）」

https://medical.tsumura.co.jp/products/088/pdf/088-tenbun.pdf

まとめ

二朮湯は、肩や首、腕まわりの痛みやこわばりを主訴とし、回復が停滞している状態に用いられる漢方薬です。五十肩や頚肩腕症候群、慢性的な肩こりなどで、炎症や画像所見が目立たない一方、重だるさや動かしにくさが残っているケースと相性の良い処方です。

即効的に痛みを抑えるというよりも、水分代謝や全身の巡りを整えることで、症状の背景にある偏りに働きかけていく点が特徴です。服用を続ける中で、肩や腕の重さ、動かしづらさが徐々に変化していくと感じられることがあります。

もし、

• 肩や首のこりが慢性的に続いている
• 五十肩で痛みは落ち着いたが動かしにくさが残っている
• 湿布や鎮痛薬だけでは改善を実感しにくい
• 天候や体調で症状がぶり返しやすい

こうした状態が続いている場合は、市販薬だけで様子を見るのではなく、一度医療機関で相談することをおすすめします。似た症状でも、神経障害や整形外科的疾患など、別の原因が背景にあることもあるためです。

オンライン診療を活用すれば、外来に足を運ぶ時間が取れない場合でも、自宅や職場から相談し、診察から処方、薬の受け取りまでを無理なく進めることができます。忙しい方や通院が負担に感じられる時でも、症状を放置せず向き合える選択肢です。

「肩や腕の不調を抱えたまま、なんとか日常をこなしている」

そんなとき、二朮湯は一つの選択肢として検討する価値のある漢方処方です。

『患者目線のクリニック』のオンライン診療は、料金も対面診察と大きく変わりません（別途システム利用料1,000円が必要です）。本日予約の空き枠も確認可能ですので、お忙しい方はぜひ気軽に相談してみてはいかがでしょうか。

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