辛夷清肺湯は市販で買える？効果や副作用、飲み方、処方薬との違いを医師が解説

辛夷清肺湯（しんいせいはいとう）とは

「鼻づまりが続いて、息がしにくい」

「黄色く粘り気のある鼻水がなかなか治まらない」

「鼻の奥に熱感があり、においがこもる感じがする」

こうした鼻の不調が長引いているときに、選択肢に挙がる漢方薬が辛夷清肺湯です。

辛夷清肺湯は、古くから鼻づまりや膿性の鼻汁、鼻の奥の熱感などを伴う状態に用いられてきた処方で、鼻や副鼻腔にこもった熱を冷まし、炎症を鎮めながら排膿を促す方向性で組まれています。透明な鼻水よりも、黄色く濃い鼻汁が続くタイプの鼻症状で検討されることが多い漢方薬です（参考※1）。

臨床現場では、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などで症状が慢性化し、抗菌薬や点鼻薬だけでは改善しきらない場面において、鼻の通りと炎症の両面から整える目的で使用されることがあります。

この記事では、辛夷清肺湯の効果、体質との相性、構成生薬、注意点、飲み方、オンライン診療での処方について、医師の視点で整理します。

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※1 参考：医薬品インタビューフォーム「ツムラ辛夷清肺湯エキス顆粒（医療用）」 https://medical.tsumura.co.jp/products/104/pdf/104-if.pdf

辛夷清肺湯の効果

辛夷清肺湯が向くのは、鼻の症状において「冷え」よりも「熱」が前面に出ている状態です。透明でさらさらした鼻水ではなく、黄色く粘り気のある鼻汁が続き、鼻閉感が強く、息苦しさや頭重感を伴うタイプと相性が良い処方です。

また、急性期を過ぎたあとも炎症が残り、鼻づまりや膿性鼻汁が長引いている場合に検討されることがあります（※2）。

臨床現場では、

• 鼻づまりが長く続いている
• 黄色い鼻水や後鼻漏が治らない
• 鼻の奥が腫れた感じが取れない
• 頭が重く、すっきりしない

といった状態で処方されることが多く、特に慢性的な炎症によって鼻粘膜の腫脹と分泌物の停滞が続いている場合に向きます。

ただし、似た症状でも感染症や構造的な問題など、他の疾患が背景にあることもあるため、必要に応じて鑑別や検査を行った上で判断します。

※2 出典：医薬品インタビューフォーム「ツムラ辛夷清肺湯エキス顆粒（医療用）」https://medical.tsumura.co.jp/products/104/pdf/104-if.pdf

辛夷清肺湯の構成生薬

辛夷清肺湯は、鼻や上気道にこもった炎症と熱を鎮めることを目的に、複数の生薬を組み合わせて構成されています（出典※3）。
中心となるのは、辛夷、黄芩、山梔子、知母、百合、麦門冬、石膏、升麻、枇杷葉といった生薬で、「鼻の奥に停滞した熱と炎症を冷まし、分泌物の排出を促す」方向性で組まれています。

特に重要なのは、

• 辛夷・枇杷葉：鼻閉や鼻粘膜の腫れに働きかけ、通りを改善へ向ける
• 黄芩・山梔子・知母・石膏：炎症と熱を鎮め、膿性鼻汁や頭重感の軽減に寄与
• 麦門冬・百合：乾燥しやすい粘膜を潤し、炎症後の違和感を和らげる

という役割の分担です。

飲んですぐに鼻づまりが一気に取れるというタイプの漢方ではありませんが、炎症が長引いて慢性化した鼻症状に対して、熱と腫れを徐々に鎮めながら状態を整えていく処方です。

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※3 出典：医薬品インタビューフォーム「ツムラ辛夷清肺湯エキス顆粒（医療用）」https://medical.tsumura.co.jp/products/104/pdf/104-if.pdf

辛夷清肺湯が向いている人

辛夷清肺湯が向く体質は、次のような特徴があります（出典※4、参考※5）。

• 鼻づまりが長引き、すっきり通らない
• 黄色く粘り気のある鼻水や後鼻漏が続く
• 鼻や顔まわりに熱感・ほてりを感じる
• 頭が重く、集中しにくい感覚がある
• 急性期を過ぎても鼻の炎症が残りやすい

特に、「鼻に熱がこもり、炎症が慢性化している状態」という点が大きなポイントです。

副鼻腔や鼻粘膜の腫れが引かず、分泌物が停滞することで症状が長引いているタイプと相性が良い印象があります。

一方で、冷えが強く、透明でさらさらした鼻水が主体の方や、全身の倦怠感が前面に出る場合には、体質に合わないこともあります。鼻症状の色・粘度・熱感の有無を手がかりに、他の処方との鑑別を行った上で判断します。

※4 出典：医薬品インタビューフォーム「ツムラ辛夷清肺湯エキス顆粒（医療用）」

https://medical.tsumura.co.jp/products/104/pdf/104-if.pdf

※5 参考：名城大学特設サイト「第74回 漢方処方解説（35）辛夷清肺湯」

https://www.meijo-u.ac.jp/sp/harbal_medicine/2020/074.html

飲み方・服用のタイミング

医療用のツムラ辛夷清肺湯エキス顆粒の場合、通常、成人では1日7.5gを3回に分けて、食前または食間に服用します（出典※6）。
漢方薬は基本的に空腹時の方が吸収が安定しやすく、辛夷清肺湯でもその考え方は同様です。

食前とは食事の30分〜1時間前、食間とは食後2〜3時間後を指します。
粉薬が苦手な方や喉・鼻の違和感が強い場合には、少量のぬるま湯に溶かして飲むことで、刺激感が和らぐことがあります。

辛夷清肺湯は、炎症や熱を徐々に鎮めていく処方であり、即効性を期待する薬ではありません。
鼻づまりや鼻汁の変化を比較的早く自覚することもありますが、慢性化した症状では、数日〜数週間単位で経過をみながら調整していくことが一般的です。

途中で服用を中断したり、自己判断で量を変更すると効果が安定しにくいため、症状の推移を確認しつつ、医師と相談しながら続けることをおすすめします。

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※6 出典：添付文書「ツムラ辛夷清肺湯エキス顆粒（医療用）」https://medical.tsumura.co.jp/products/104/pdf/104-tenbun.pdf

副作用と注意点

辛夷清肺湯は比較的安全性の高い漢方薬ですが、体質や体調によっては副作用がみられることがあります。主に、胃部不快感、食欲不振、腹部膨満感、下痢などの消化器症状が報告されています（出典※7）。

また、まれではありますが、肝機能異常（AST・ALT上昇など）が報告されており、長期間の服用や他の薬剤を併用している場合には注意が必要です。
体質に合わないまま服用を続けると、かえって胃腸に負担がかかることがあります。

辛夷清肺湯は「熱がこもり、炎症が前面に出ている鼻症状」を想定した処方のため、冷えが強い方や、全身の虚弱感が目立つ場合には合わないことがあります。症状や体質に応じた見極めが重要です。

肝機能障害の既往がある方、消化器症状が出やすい方、他の漢方薬や肝代謝に影響する薬剤を併用している場合には、医師による経過観察のもとで使用することをおすすめします。

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※7 出典：添付文書「ツムラ辛夷清肺湯エキス顆粒（医療用）」https://medical.tsumura.co.jp/products/104/pdf/104-tenbun.pdf

辛夷清肺湯を入手するには？｜オンライン診療・患者目線のクリニックでも処方可能

辛夷清肺湯は、医療機関で医療用漢方薬として処方されるほか、一般のドラッグストアでも市販薬を購入することは可能です。

ただし、市販薬と医療用では生薬量や配合が異なる場合があり、慢性的な鼻症状に対して効果を安定して得たい場合には、医療機関での処方が望ましいケースがあります。

鼻づまりや膿性鼻汁、後鼻漏といった症状は、単なる鼻炎にとどまらず、慢性副鼻腔炎やアレルギー、炎症の遷延などが背景にあることも少なくありません。

症状が長引いている場合や、日常生活に支障が出ている場合は、市販薬で様子を見るより、早めに医師へ相談することをおすすめします。

『患者目線のクリニック』では、鼻づまりや慢性的な鼻炎症状といった辛夷清肺湯が検討される状態だけでなく、咳、喉の違和感、頭重感、睡眠の質低下など、漢方外来で対応している幅広い不調について相談が可能です。

年間診療件数10万件以上の実績があり、年中無休で早朝6時から深夜24時まで診察を受け付けています。

全国どこからでも受診でき、予約・診察・決済・薬の受け取りまでをオンラインで完結可能です。薬は自宅配送のほか、当日にいつもの薬局で受け取ることもできます。通院の負担を減らしながら、継続的な治療相談がしやすい体制が整えられています。

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辛夷清肺湯の市販薬｜代表的な製品と特徴

辛夷清肺湯を市販で試したい場合、ドラッグストアや薬局で購入できる製品があります。
黄色く粘り気のある鼻水や鼻づまりが長引くときなど、まずはセルフケアとして検討されることの多い漢方薬です。

クラシエ「辛夷清肺湯エキス顆粒『クラシエ』」

顆粒タイプの第2類医薬品で、通常、成人では1回1包を1日3回、食前または食間に服用します。粉薬ですが比較的溶けやすく、鼻づまりや膿性鼻汁など、炎症が前面に出た鼻症状を想定した処方です。慢性的な副鼻腔炎や鼻炎による「鼻の奥の詰まり感」が気になる方に選ばれることが多い製品です。

出典：クラシエ 漢方セラピー「辛夷清肺湯エキス顆粒『クラシエ』24包」

https://www.kracie.co.jp/products/ph/10179829_2220.html

小太郎漢方製薬「辛夷清肺湯エキス細粒G『コタロー』」

細粒タイプの一般用医薬品で、通常、成人では1回1包を1日3回、食前または食間に服用します。細かい顆粒状で、顆粒が苦手な方でも比較的飲みやすい設計です。鼻づまりや黄色い鼻水が続くなど、慢性化した鼻症状を背景に使われることが多い製品です。

出典：小太郎漢方製薬株式会社「辛夷清肺湯エキス細粒G『コタロー』」

https://www.kotaro.co.jp/iryou/product_list/detail/virtue/d171.pdf

市販の辛夷清肺湯はいずれも、慢性的な鼻づまりや膿性鼻汁といった症状に取り入れやすい一方、生薬量や配合バランスは医療用とは異なります。症状が長引いている場合や、強い痛み・発熱を伴う場合、繰り返し悪化する場合には、市販薬だけで判断せず、一度医療機関での相談を検討することをおすすめします。

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よくある質問（Q&A）

Q：どのくらいで効果を感じますか？

個人差はありますが、早い方では数日〜1週間ほどで、鼻づまりや鼻汁の変化を感じ始めることがあります。一方、慢性副鼻腔炎や鼻炎など、症状が長引いている場合には、1〜2週間以上かけて徐々に改善を実感するケースも少なくありません。

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Q：他の薬や漢方と併用できますか？

特に、他の漢方薬や複数の漢方を同時に使用する場合には注意が必要です。
また、消炎鎮痛薬や抗アレルギー薬などを併用している場合も、症状や経過を踏まえた調整が重要になるため、自己判断せず医師や薬剤師に相談してください。

Q：妊娠中や授乳中でも使えますか？

妊娠中・授乳中の使用については、母体・胎児・乳児への影響を考慮し、有益性がリスクを上回る場合に限って慎重に判断されます（出典※8）。自己判断での服用開始や、市販薬との併用は避け、必ず医師へ相談してください。

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※8 出典：添付文書「ツムラ辛夷清肺湯エキス顆粒（医療用）」https://medical.tsumura.co.jp/products/104/pdf/104-tenbun.pdf

まとめ

辛夷清肺湯は、鼻づまりや膿性鼻汁、後鼻漏、頭重感などを伴う、「熱」が前面に出た慢性的な鼻症状に用いられる漢方薬です。

特に、急性期は過ぎたものの炎症が残り、「鼻がずっと詰まっている」「黄色い鼻水が切れない」「すっきり呼吸できない」といった状態が続く場合と相性が良い処方です。

効果は即効的に鼻を通すというよりも、鼻や副鼻腔にこもった炎症と熱を徐々に鎮めながら、通りを整えていくイメージで現れることが多く、継続することで症状のぶり返しが起こりにくくなるケースもあります。

もし、

• 鼻づまりが何週間も続いている
• 黄色く粘り気のある鼻水や後鼻漏が治らない
• 頭が重く、集中しにくい状態が続く
• 市販薬や点鼻薬だけでは改善しきらない

こうした状態が長引いている場合は、市販薬だけで様子を見るのではなく、一度医療機関へ相談することをおすすめします。慢性副鼻腔炎やアレルギー、炎症の遷延など、背景となる病態が隠れていることも少なくありません。

オンライン診療を活用すれば、耳鼻科や内科への通院が難しい場合でも、自宅や職場から相談でき、処方から受け取りまでを無理なく進めることが可能です。鼻症状がつらい時でも、治療を後回しにせず取り組める選択肢です。

「鼻の不調が当たり前になってしまっている」

そんな時、辛夷清肺湯は体質と炎症の両面から見直すきっかけとして検討する価値のある処方です。

『患者目線のクリニック』のオンライン診療は、料金も対面診察と大きく変わりません（別途システム利用料1,000円が必要です）。本日予約の空き枠も確認可能ですので、忙しい方や通院が負担に感じる方は、ぜひ気軽に相談してみてはいかがでしょうか。

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